病気というものはこれまで臓器別に分類され、個々の治療が行われてきました。 しかしそれだけでは病気や臓器相互のつながりがよく見えず、「木を見て森を見ず」という誤りに陥る事もしばしばです。 逆に言えば、疾患観(病気をとらえる視点)が変わると病気全体が良く見えてくるのです。 そこで病気を新たに「代謝症候群」「免疫症候群」「自律神経症候群」および「脳症候群」の四群に大きく分けてみます。
「代謝症候群」には、肥満、糖尿病、高脂血症、脂肪肝などの生活習慣病、いわゆるメタボリックシンドロームもこれに含まれます。 これらの病気が「脳疲労」と密接に関連している事はBOOCS発症仮説(生活習慣病はなぜ起こる)で述べたとおりです。 高血圧症、心臓病、更年期障害などの病気は自律神経のバランス失調が主な原因となっており、「自律神経症候群」と言うことができます。 「免疫症候群」にはアトピーや喘息、花粉症などのアレルギー疾患や癌、感染症といった病気が含まれます。 特に最近急増してるアレルギー疾患は、子供達から大学生までを対象とした調査により「脳疲労」との密接な関係があることが分かってきました。 これら身体疾患である「代謝症候群」「免疫症候群」「自律神経症候群」は別々に存在するのではなく、(図1)で示すように多くは重なり合って存在しており、 これを「脳疲労症候群」と呼ぶことにします。
「脳症候群」はうつ病、神経症、統合失調症など精神科領域の疾患も含みますが、それと類似した普通の人が陥りやすい「心の病」、 すなわち不安障害、気分障害(うつ状態)、ストレス性適応障害など早期に治療すれば治りやすい病態をも包括しています。 精神異常である「脳症候群」では、通常多かれ少なかれ身体異常も合併しており、実は一体となって存在しています。 つまり病気とは常に心と身体に現れ、その中核に「脳」という臓器があり、その出発点は脳機能低下すなわち「脳疲労」であると考える事が出来るのです。
以上のように、病気を大きく分類しこれらを束ねる新たなカテゴリーを「脳疲労症候群」とすることで、多くの病気をとらえ直すことができると考えられます。 すなわち「木を見て森も見る」ことが可能になるのです。さらに治療にも貢献し、現状の「平均的」治療から、「個別的」治療へ発展させる力になるのです。 「脳疲労症候群」は東洋医学が昔ながらに提唱している「未病」概念の現代的表現でもあり、その本体は脳にあるということを具体的に説明している点で新たな意義があると考えます。